中華と東南アジアがフュージョンした拿督公の信仰|マレーシア

クアラルンプールを歩いていると、100mから200mに一つの間隔で設置されている小さな赤い御堂を見かける。興味がなかったら「チャイニーズの何かでしょ」と気にも留めないかもしれない。でもこの形状の御堂、台湾でも香港でもみたことがなかったので、すごく気になった。中を覗くと、”拿督公”と書かれている。

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”拿督公”の文字をヒントに調べてみると、wikiの英語版と中国語版にその情報があった。拿督公はマレー語のNa Tuk Kongの音譯(近い発音の漢字を割り当てて中国語化)だった。マレーシア、シンガポールインドネシアなどの地域で広く信仰されている土地の神様、または精霊のようなものを指している。語源が”grandfather”なので、亡くなった土地の有力者を祀っていたものが神格化したイメージだろうか。マレーの土地に後から入ってきたチャイニーズ系住民の道教儒教的な習慣とマッチして、なんだか中華な”拿督公”に昇華したようだ。

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御堂の中には小さなお爺さんが鎮座している。

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”拿督公”と書かれた札だけのパターンもある。この小さな階段を使って精霊のお爺さんが出入りしているのかと想像すると楽しい。

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郊外に行くと御堂にもいろんなパターンがあって、トタン屋根の簡素なものも多い。

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チャイニーズの菩薩様などが入ってることもあり、もう何が何だかわからない。尊いものならなんでも入れてよし、的な?

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そして、人口数十パーセントのインド系住民とフュージョンし、ヒンドゥー教の神様とミックスしている。不思議だ。

 

長い年月をかけて異文化がずるずると融合していくアジアな感覚がたまらない。マレー系ムスリムの中には、イスラム教とは別に土地の精霊的なものを信じてる人が少なからずいるみたいだ。たくさんの異文化が合流するマレーシアって土地は本当に面白いなと思う。